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第156回ロンドン会座 「よき友を持つことはすべてである」

ロシアのウクライナ侵攻第四日目に当たる2022年2月27日、第156回ロンドン会座が開催されました。継続する疫病と共にヨーロッパの新たな戦争の勃発が惹起する不安にも拘らず、三輪精舎の友は僧伽の平安な雰囲気の中に集まって喜びあいました。三輪精舎に実際に参詣したお同行に加えて、凡そ15人のお同行がオンラインで参加し、そこにはケニアのナイロビやアメリカ合衆国インディアナ州のサウス・ベンドからの参加者もいました。

御会座は、最近ご逝去された三輪精舎創建時理事、アン・モンゴメリー夫人の追悼で始まりました。佐藤顕明師が謝辞を読み上げ、モンゴメリー夫人の僧伽に対する惜しみない愛と援助に感謝のまことを奉げられました。顕明師は、モンゴメリー夫人の英国国教会信徒としての篤い信仰が、アン夫人の目覚しいはたらきを深く支えていたことを確認し、それは真の宗教間対話実践の素晴らしい実現であったと述べられました。

勤行の後、サム・ケリー氏とクリストファー・ダックスベリー氏がそれぞれに、過去二年間世界的に流行したコロナ禍の期間中、三輪精舎の日曜会座に常連として参加された経験を振り返りながら感話をされました。

サムさんのお話しの題名は、「ロックダウンの暗雲から明るい希望を示現する阿弥陀の光り」でした。サムさんは、疫病流行の前は毎週三輪精舎に行ってペンキ塗り等の作業をお手伝いをしていたのに、参詣も奉仕も出来なくなっておかしくなったことを話されました。しかしながら、オンラインでの日曜朝参りは本当に素晴らしく、「お同行の一週間の経験や内省を聞くことによって、みなさんとの関係を構築させて頂けた」と言われました。サムさんは、「話し合いで親密になれたことやオンラインで本当の出会いをすることが出来たのは、うれしい驚きでした」と仰いました。

クリストファーさんも後で仰ったことですが、サムさんは「ジョン・ホワイト教授の御葬儀に際して、彼の生涯と業績を祝福するために日英のお同行が三輪精舎で再開したとき、目の前に輝き出した阿弥陀仏の光明によって、ホワイト教授が三輪精舎僧伽のために何をして下さったか、そのご恩徳をより明確に自覚させて頂きました」と深い感慨を述べられました。

サムさんはそのお話しの結論として「親鸞聖人は阿弥陀仏を信仰する人生には十種の益があるとされ、その内の二つは心光常護の益と心多歓喜の益です。オンラインの日曜朝参りを御縁として、阿弥陀仏の光明は眞にロックダウンの暗雲から明るい希望を紡ぎ出してくれ、三輪精舎僧伽に集う私たちの心に多くの歓喜を与えて下さいました。この世界的流行病がなかったら起らなかったかもしれない本当の明るい希望です」と仰って下さいました。

クリストファーさんのお話しの題名は「彌陀如来常住への目覚め」でした。クリストファーさんは、苦しいロックダウンの期間を、自らを深く内省する一種の「雨安居」として見るように励まして下さったご院家さまのお手紙から、彼自身とお同行が頂戴した大きな感動を話してくれました。ご院家さまのご助言は、この貴重な好機を無駄にしてはならないという大決心を彼に与え、着実にして継続的な実践を保ちなさいという顕明先生の助言に従いたいと思われたそうです。

クリストファーさんは、日曜朝参りに参加し続けたことと、ロックダウンの殆どを内省の時間に使ったことによって、他者の苦しみに気付かせて頂いたこと、自らに賜わった御恩を知らせて頂いたこと、そしてまた他者の内にある仏性に目覚めさせて頂いたことを話して下さいました。クリストファーさんは「もし私の人生で佛法に出会っていなかったら、間違いなく私自身の心は、心配や挫折で憔悴し重々しく否定的になっていたでしょうし、ただただ周りの人びとを害するだけだったでしょう。かくて私は、佛さまが、正行寺と三輪精舎を通して、肯定的なエネルギーの小さな波としてはたらき出しているのを見させて頂くのですが、その波動はお寺と直接的な関係のある人びとだけでなくそれを超えてはたらき出しているのを実感します」と言われました。

家で静かな時を過ごした後、毎日散歩に出て、クリストファーさんは「佛法は他との関係を通して非常に活き活きしてくる」と実感されたそうです。クリストファーさんは「私は、周りの世界や人生で触れ合う人びとの美しさに気付かされます。それは、過去においては一つの状況から他の状況へ急ぐあまりに見過ごしていたものです。私の散歩道にある木々には、それ自身の個性があるように思えました。木々が静かに自然に常に気候の変化に適応しているのには、畏敬を覚えます。木々の無常は、世界は固定していないということを思い出させてくれましたし、これは私自身の自己についても言えることだと内省させて頂きました」と話されました。

クリストファーさんはまた「町を歩いていると老婦人が目の前で倒れ、その時沢山の人びとがとても親切にそのご婦人を助けました。この経験はすべての人に仏性があるのだということを強く思い出させてくれるものでした。あんなに沢山の見知らぬ人びとの中に深い親切心を見ることができたのは非常に感動的でした。もしあの出来事がなかったら、彼らの心にあんな素晴らしい慈悲心があることを知らずに過ごしてしまっていたでしょう。これからの歩みにあの想い出を携えて行きたいと思います」と話されました。

結論としてクリストファーさんは「ロックダウン中の比較的静かな時に経験した静寂の中で、自分がどれほど支えられているかについて気づきを頂戴しました。あからさまに友人や家族によってということだけでなく、今温かく安全に充分に食べて充実した人生を送ることが出来るところまで私を支えてくれた、これまでの経歴に現れた他者の数え切れない助力に支えられてきました。今私はそのことについてこれまでより多くの気付きを頂いたように感じており、頂戴したご恩に感謝させて頂いています。そういう私にできますことは、佛さまの前に額づき感謝の南無阿弥陀仏を称えさせて頂くばかりです」とお礼の言葉を述べられました。

司会のアンドリュー・ウェブ氏はお二人の感話に対して「一時は大騒ぎになりながらもいろんな意味で単調でもあった過去二年間を振り返るというのは、必ずしも易しくはなかったでしょう。しかしながら、この二人のお同行は私たちみんなに、そのような辛い経験を、私たちの行信の経験に消化して行くありさまを話して下さいました」と感謝の言葉を述べられました。

次にお会座は自由な質問と所感の場となりました。サミー・リチャード氏は二人のスピーカーに、「霧が立ち込めて、凍えるように寒く、完全に迷ったような心境になってしまったときは、どうしたら行に迷うことを避けられるのか」と質問しました。サムさんもクリストファーさんも、自分達にとっては、ある程度一貫した行が前面に信頼すべき道を照らし出してくれるのですと答えられ、クリストファーさんは「ただお佛壇の前に額づくというような小さなことが、正しい心境を齎してくれるのです」と仰いました。

オンライン参加者の中では、米国から参加のニール・チェイス氏が「明るい希望」というテーマが本当に心に響きましたと言われました。ニールさんは「二年前に‘私の誓い’であった‘誓い’の意味が‘私の内に用らく誓い’という理解に変りました。この変化がオンラインロンドン会座へのご招待と一致しました」といわれました。そして「クリストファーさんはその感話の中で‘佛法が自分の中で活き活きとなる’といわれました。それは、この僧伽について私が真実だと感じるところであり、対人関係における精神的出会いの強調が明瞭に表現されています」と付け加えられました。顕明先生は、「オンライン参加のニールさんが、出会いが真実の根源であるという点を取り上げられたのを聞いて非常に嬉しい」と仰いました。

石井早苗さんは、お同行が本当に真摯に行じておられることに感動したということと、僧伽でそのようなお同行と共に同じ道を歩いていると実感した喜びを感動的に披瀝されました。彼女の娘の石井ひとえさんも、前出のサミーさんの真摯な問を聞かせて頂いて、お寺に生まれ育ったという至福を当たり前と思ってはならないと解らせて頂いたと、涙ながらに話されました。

石井建心師は、「お釈迦さまの『よき友を持つことはすべてである』というお言葉に皆さんの所感の意味がすべて籠められています」と述べられました。建心師は、「私たちの心は常に佛様から逃げようとします。それはたとえお寺に住んでいても同じで、怠惰になり、自己中心になって自分自身の見解に執着してしまいます。このような自己中心性が、現在ロシアとウクライナの間で起っているような戦争の原因になってきます」と仰いました。建心師は「私たちの心は暗くなります。だから私たちは、その暗闇を照らしてくれる素晴らしい友を与えられています。私たちの心眼は雲に覆われており、時にそういう素晴しい友に取り囲まれていることが解らなくなります。今日、外は晴天で雲ひとつありません。春はもうそこです。それぞれに心を見つめて、心を常に輝らす阿弥陀仏の光りを感じさせて頂きましょう」と仰いました。

また、最近の僧伽の活動のオンライン・ミーティングの役割を振り返りながら、建心師は「テクノロジーは素晴らしいのですが、活動に参加するかどうかを決めるのは、私たちの心が三宝と共にあるかどうかです」とも仰いました。

会合を終わるに当たって顕明師は皆さんに感謝され「鈴木大拙先生は、阿弥陀佛は利他的衝動の象徴であると仰いました。それは佛性であり、無縁の大悲です。私たちは、アン・モンゴメリー夫人のような個々人を通して、不可思議な真実の素晴らしいはたらきに気付かせて頂きます。私は今日、彼女の夫であり、私の友人である、スティーヴン・モンゴメリー博士に、アンさんがその智慧と愛をもって育てて下さった僧伽の現在のすばらしい状態を報告できて、本当に安心しました」と仰いました。

南無阿弥陀仏

合掌

アンディ・バリット

2022年二月二十八日