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第146回ロンドン会座、世界平和と和解を祈る今年度法要の報告

世界平和と和解を祈る今年の法要は、和解運動の創始者であった日英両国の退役軍人の方々が、残念ながらすべて亡くなってしまわれたので、特に痛切に心に訴えるものと成りました。しかしながら、退役軍人が居られないにもかかわらず、ロンドン日本大使館政務班の三浦潤公使がその開会の辞で平久保氏やメリンズ氏など偉大な故人を思い出させて下さいました。三浦公使は二十五年ぶりに英国に帰任されたところだそうで、その間に日英関係に非常に大きな進歩があったことが解り、今や日本と英国は最も親密な友人であり国際的な仲間であると思うようになりましたと仰いました。三浦公使は、多年にわたって故平久保正男氏などが開拓した和解運動の代表として、佐藤顕明氏が令和天皇陛下によって旭日双光章を授与されたことを随喜慶讃されました。三浦公使は「皆さま方が今後も努力を継続し、このような定期的会合と活動によって、平和と和解のメッセージを発信し続けられるよう祈念しています」と結ばれました。

三浦公使のお話しに続いて、第二次世界大戦戦没者の追悼法要が営まれ、佛教各宗派の方々の読経の間には、日本大使館とミャンマー大使館の方々などの代表焼香があり、退役軍人の方に大事にされてきた伝統的な詩二編の朗読が続きました。英国国教会を代表してトーマス・プラント師からのメッセージが読み上げられました。プラント師は皆さん方に単純な「東」と「西」の対立を超えた見方を薦められ、「真の友情は安易な『同』『異』の二元を超えねばならない」ことを思い出させてくれました。私たちはそのためには「厳密なる自省と懺悔と至心が要ります。相互に与え合う関係の中で真実の自己を発見するためには、単なる我を十字架にかけます」とお話し下さいました

儀式が終ると佐藤顕明師が感動に満ちた謝辞を述べられました。多年にわたって日英退役軍人の間に目撃した「美しい精神的な出会いと出会い直し」のお話しでした。顕明師は「私たち後世代のものにとって大事なことは、それら勇敢な軍人の方々が、時には身の危険を冒しながらも、成し遂げようとして来られた真実を忘れないことであり、常にイナー・ピース(心の平和)に帰りつつ、そういった軍人の方々の平和と和解に対する熱烈な願いに答えるために、いつまでも最大限の努力を続けることです」と話されました。顕明師はまた、真友であるジョン・ホワイト教授が、日英の人々の相互理解を改善し発展させるために、長年にわたり、ご自身の健康が危険に晒されてもなお、献身的に働き続けて下さったことに甚深の謝意を述べられました。
お会座の終わりに向けて出席者たちはその所感を述べるように勧められました。アンドリュー・ウェブ氏は、外圧によって国を奪われるという大混乱を被った土着の人びとの苦悩を思えば、ミャンマーの人民を代表する方々をお迎えできたことを非常に嬉しく思いますと話されました。石井建心師も、さまざまな流派のさまざまな僧尼の読経によって醸し出された素晴らしい平安な雰囲気を感得して、「今ここにイナー・ピース(心の平和)の一瞬を見出すことこそが憎しみを超える本質的原点である」と仰いました。そして、建心師は、顕明師のジョン・ホワイト教授という英国人との出会いを振り返りつつ、「そのイナー・ピースは個々人の精神的な出会いと相互理解によってたまわるのであり、それによってすでに受け容れられていたという事実に気付かせて頂くのである」と甚深の所感を述べられました。そして当日の会合を総括するために建心師は、あるご年配の真宗僧侶の方から頂戴した助言を披露して下さいました:「私たち凡夫はいつも自分の持っていないものを計算していますが、私たちに大事なのは、そういう計算ではなくて、既に与えられているものに気付くことです。受け取ったものに気付く瞬間は、瞬間ごとに心に感謝をもたらします。いのち、家族、食物、水、空気でさえも、すべてがたまわりものです。一瞬ごとにこれに気付けば、どうして怒ることができるでしょう」と。